肘内障 整復した感覚のないまま良くなった症例

乳児

整復した感覚がない

3歳 女児

自宅にて椅子から落ちて腕が下敷きになり受傷

当日、整形外科受診しレントゲン検査の結果【骨に異常はなし】

骨折ではないので肘内障(肘が抜けた)だろうと整復操作をしたが、その後も痛がり手を使わなかった。

医師に少し様子をみて痛がっていたら2日後に来るように伝えられた。

固定などの処置はなし。

翌日、当院に来院しました。

 

症状・様子

患肢はダランとしたまま動かそうとしない。

普通にしていると話はできるし笑う事もできる。

患部を触ろうとすると泣き出す。

 

鎖骨・上腕骨・前腕骨の骨折症状はない。

整復を試みるもクリックを触知せず、腕を使う様子もない。

これまで20年やっていて2例だけその場で整復されずに、翌日にあっさり入っちゃったという症例があったので、無理をせずにプライトンで固定をして様子をみることにしました。

 

翌日の経過など

固定を外しても腕を動かす様子はない。

母親いわく、昨夜は目を覚まして痛がって泣いたと。

ただ、家の中で昨日よりは少しだけ動かせてはいると。

しかし、2日連続で整復操作をしているので、これ以上の痛みや恐怖を与えるのは逆効果だと判断し肘にゆるく紐を巻き昨日と同じくプライトン固定をするだけにしました。

ヒモを追加した理由

2日連続で痛い思いをしているので、腫れや筋肉の硬さがあるのでやさしい皮膚刺激で緊張を取り除く目的で施行しました。

 

腕を使いはじめてから治癒まで

翌日に来院すると、固定をしたままではあるが腕を使って遊んでいました。

固定を外しても、完全ではないが腕を伸ばしたり椅子の手すりにつかまったりできていました。

昨夜は泣く事もなかったそうです。

この様子なら、無理に整復操作をしなくても良くなるだろうと判断しプライトンは除去し、紐だけ巻いて終わりにしました。

問題なく終了

3日後来院すると、家では普通に遊んでいて痛がってないと聞き患部を確認すると、痛がる様子もなく触らせてくれ動きも問題なく終了となりました。

 

今回の症例から考えさせられること

ここからは専門的になってしまいます。

肘内障といえば、整復してその場で終わりとなるのが通常ですが稀に整復されない場合があります。

今回は、あのクリックを感じないまま正常になりました。

考えられること

・そもそも肘内障じゃなかった→→受傷機転・症状・患肢の状態からほぼ肘内障だと断定できる。(医師の診断も含め)

・橈骨頭と輪状靭帯との関係は本当に揺るぎないものなのか?→→大人の肘内障というのもありますし、実際に輪状靭帯から逸脱している状態や整復後どうなったのかを確認した研究が存在するのかは不明です。

 

橈骨頭と輪状靭帯との関係が否定されたとしたら

学校でも習ったし、先輩方にも同様に教えられてきていると思います。

ほとんどの症例でその場で整復され帰るころにはケロッとしてる様子をみると、肘内障に対して深く考えるという事はしないんじゃないかと感じています。(少し前まで僕もそうでしたし)

しかし、人の痛みというものを深く理解していくと様々な疑問が生じてくるはずです。

 

肘内障とは何なのか?

今回の症例のように整復せずとも改善するとなると、概念そのものに対し考えるきっかけになって欲しいです。

受傷機転としては、手を引っ張られた・転倒し手をついたなど明らかな外傷であることは疑いようはありません。

ひとつ仮説として挙げられるのが関節反射ショックという理論です。

そして、子どもといえど外傷の痛みには組織の損傷だけという事はありえないと思っています。

ケガをした時の状況・痛みそのもの・まわりの大人の対応などで不安や恐怖を感じれば感情が働き、痛みも増幅することだって考えられます。

今後は肘内障といえどハイブリッドペインが含まれている事は念頭に置いて診ていきたいです。

そうなると、あのクリックは何なのか?という疑問は出てくるが、そこは今後の展開に期待したいです。

基本的にはその場で治るものがほとんどなので、もし今回のような症例に出くわしても慌てずに対応していけば大丈夫です。

 

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