患者さん本人もビックリするほど些細な原因でのケガでしたが、さらに驚いたのは痛みの強さです。
その理由は、ケガの原因ではなく痛みの原因を知れば納得できることでしょう。
トイレで向きを変えた瞬間に膝に激痛が走った
68歳 女性
自宅のトイレで立ち上がって体の向きを変えた時に膝を捻って受傷
・歩く時の痛みと自転車から降りた時に足をつくと痛い(漕いでる時は平気)という症状が強かったので、プライトンという適度な柔軟性のある固定材料で膝の前から当てて固定しました。
膝の前面から当てて固定する理由
・靭帯損傷の程度が酷くない
・膝の後面に当てると歩行を含めた日常生活が著しく損なわれる
・同様に、後面からだと関節の固さが出やすいから
これらを考慮した上での判断です。
初診以降の驚くべき早期改善
翌日に来院し、歩く時の足の引きずりは改善していましたが、まだ痛みは残っているのでBFI施術後に同固定をしました。
患者さんには「昨日の痛みがウソみたい」とおっしゃっていただけました。
さらに翌日に来院した際には、固定を外して来院し普通に歩いており、ケガをして6日後には痛みがゼロになっていました。
初診時の痛みや足の引きずり方からすると、ちょっと大きい病院ならMRI検査までされていたでしょう。
それが安心感につながる方もおられるでしょうが、どっちがいいのでしょうね。
もちろん、僕が必要だと判断すれば検査を勧めることはしますのでご安心ください。
長年【脳と痛みの関係】という視点で患者さんを診ていると、ここは切っても切り離せないと強く感じます。⇒脳と痛みの関係とはどういう事なのか?
『膝が痛いから膝だけ診る』なんてのは、今の時代には本来ありえないんですね。
ちょっと膝を捻っただけで痛みが強く出た症例
68才 女性 会社員
こたつで足を伸ばして寝ていて体勢を変えようと動いた際、膝に痛みが出た。
湿布をして一晩経ったが、痛みが残っていたので来院されました。
膝の内側が腫れていて、押しても痛い・動かしても痛いという状態でしたので、プライトンによる前面からの固定をしました。
前面から固定する理由としては、後ろから固定されると極端に生活に支障が出る事と拘縮が発生しやすいからです。(もちろん症状によって異なります)
受傷機転の程度より症状が強くでた理由
寝ていた体勢から向きを変えただけで膝を痛めたという状況は普通に考えれば「それだけで?」って思いますよね。
昔の僕だったら「なんじゃそれ!」って普通に膝の状態しか診ずに処置していたでしょう。
しかし、今は弱い外力でも症状が強く出る理由を知っているので、こういった場合はちょっと慎重に患者さんを診ています。
今回の場合は、仕事が忙しい時期に息子家族にお呼ばれされていて、本当は断ろうとしていた矢先に電話で催促されてしまったという経緯がありました。
これこそが感情のねじれという現象です!
ハイブリッドペインについてはこちら→ 痛みの分類に新提起を 従来の枠に収まらない痛みとは?
こういった時はちょっとした事でもケガにつながりやすいですし、症状も強く出る場合があります。
膝のケガに対する施術の経過
2回目の来院時には痛みは引いてきていると。
ただ、仰向けで寝て膝を伸ばす時に痛みがあってスムーズに伸ばせない。
膝の内側の腫れはまだ残っている。
BFI療法+同固定
3回目の来院時は膝の内側の腫れが引いていて、膝を伸ばす時の痛みもだいぶなくなり楽だと。
4回目の来院時、痛みが酷くなった訳ではないが、歩いている時に時々出る痛みが気になるようで訴えてきました。
初めのころの症状と比べるとかなり楽にはなっているが、その分痛みを感じると不安になるようです。
こういった事は珍しいことではなく、ケガをした直後は痛みがあるのが当たり前だったのが、落ち着いてきて痛みを感じる頻度が下がると逆に痛みを感じた時に不安(また痛みが出ちゃったと)な気持ちになる方はいます。
例えば、ケガをして一番痛かった時を10、まったく痛くない状態を0とします。(VAS)
この患者さんは数値でいうと3だとおっしゃってました。
マックスから比べると7は減っているのに、残りの3の痛みが顕在化していたのです。
7減ったから良くなってると思うか、3残ってるから不安になるか
人によって捉え方は違ってきますが、どうせなら前者を選択した方がその後の経過も良くなってくるんです。
なので改めて痛みの説明をしました。
6回目の来院時は自動ドアが開いた時から雰囲気が違ってました。
表情が明るいし、声のトーンも大きさも元気っぽい。
前回の話が効いたようでした。
膝の痛みも昨日までより楽になったと。(VAS 1)
CRPS症状を併発した膝の痛みに対する処置
自宅の庭で脚立に乗ったり下りたりをしていてバランスを崩して捻ってケガをしました。
ケガといっても直後は、ほとんど気にならない程度の痛みだったそうです。
その日の夜中にトイレに起き、その時になって症状が増悪していたと。
椅子から立ち上がるのも一苦労、歩くのも足を引きずって入って来ました。
膝は腫れが強く出ており、熱をもっていました。
腫れは膝全体におよび、お皿の骨の前にもいわゆる水が溜まっているいる状態(膝蓋前滑液包炎)です。
椅子に座って話を聞いている時もズキズキ痛むとおっしゃってました。
痛み・腫れが強いためプライトンを前面から当て包帯で固定し、なるべく両側松葉杖で歩いてもらえるようにお渡ししました。
今回の症例はケガをしてから何時間も経ってから痛みが強く出てきました。
それまでは普通に生活していたそうです。
僕はケガをした時の状況や症状がひどくなるまでのタイムラグ、ひどくなったのに気づいたのがトイレに起きた時という設定が腑に落ちなかったので、ちょっと深くお話を聞いていきました。
すると…詳しくは書けないのですが、今年に入ってから良くない事が何件かあり、その処理がまだ続いているという状況。
ずばり、ソフトペインが大部分を占めるハイブリッドペインそのものです。
割合でいうと、ケガのハードペイン 1 : ソフトペイン 9
と確信をもってます。
初検の日以降、旅行に行ったが夕方には痛みがかなり軽減し、せっかくの旅行なので温泉にも入れたと喜んでもらえました。
2回目の来院の前日の夕方にまた少し痛みが出た様子。
ただ、痛みがだいぶ軽減しているので歩く様子も良くなってました。
ただ、熱はないが皮膚の色調が気になるので固定継続。 松葉杖返却
翌日に3回目の来院した際は、立ち上がる時の痛みはあるが安静時の痛みは無し。
こういったケガは生まれて初めてなので不安がある様子。
お皿の骨の前にあった腫れはかなり小さくなってました。
皮膚の色調は良くない。 ソフトペインによるCRPS症状によるもの。
鑑別として蜂窩織炎も念頭に入れておく。
その後1週間来院がなく、気になったので電話で様子を聞いたところ、少し腫れてる感じはするらしいが痛みはなくなったと。
痛みはともかく、腫れと皮膚の感じが気になるのでもう1度診せてもらうようお願いはしたがその後も来院なく中止となりました。
ケガをする前から右膝の痛みに悩まされていた症例
自宅の庭にある石に躓いて右足を踏み出した際捻って怪我をし、1週間ほど湿布を貼っていたが痛みが治まらずに当院を受診しました。
今回、ケガをする数か月前に家族でテーマパークに行き、たくさん歩いた後から右膝の痛みは続いていたようです。
症状
・歩いている時の痛み
・立ち上がる時の痛み
・膝の腫れ
・膝の内側を押すと痛い
2回目以降の施術での経過
まだ痛みは変わっていない。
腫れの状態は変化している。(空気を入れたばかりの風船→2日経った風船って感じという表現)
その後は腫れが徐々にひいてきて。痛みも改善しており椅子から立ち上がる動作がスムーズになっている。
ケガをしてから、布団に入って寝るまでの間に右太ももに痛みがあったそうだが今は感じなくなったと。
5回目の来院時には椅子から立ち上がる動作・歩き方は普通になっていました。
翌日も自転車で来院したが、乗り降りの際も痛みがなかったと。
腫れの状態もほぼ左右差ない状態でだいぶ自信が出てきた様子でした。
お彼岸が入り6日後に来院。
忙しくしていたが痛みが出ることもなく過ごせたと。
しいて言えば、膝のまわりが重い感じがすると。
今回のケガに対しての施術は終了としました。
三郷市のコストコで膝を負傷! 強烈な痛みが出た原因と改善した理由
三郷市のコストコへ行き、閉店時間が迫っていたので少し小走りをしていたら、突然右膝に激痛が出ました。
なんとか買い物を済ませ帰宅。 翌日になっても痛みが引かず、来院しました。
この方は以前から度々当院に通院している患者さんです。
お仕事が忙しい上に、人間関係やら色々と大変なようです。 これは脳疲労に繋がり、これこそが今回膝を痛めた1番の原因です。
症状は膝に出ていますが根本的な原因は脳疲労によるものなので、施術の後オルソラップと包帯固定をしました。
施術の直後に痛みの程度は軽減されていました。
ケガの痛みであっても、すぐに変化が出るには理由があります。(ちょっと難しくなりますがお付き合いください)
痛みというのは、感覚+感情で成り立っています。
純粋なケガの痛みが①だとしても、感情の部分で⑨あったら、ケガの程度に釣り合わない⑩の痛みになります。
この感情による痛みをソフトペインと呼んでいます。
ソフトペインの割合が減ればケガの痛みであっても変化するのです。←*ものすごく大雑把な解説をすると、子どもにやる『イタイのイタイの飛んでけ~』です。
整体院で痛い施術を受けていて、身体のセンサーが興奮状態だった
数年前、当院に来院する前から整体院に通っていました。
その整体院の先生から「揉んだりしちゃダメなんだ」と説明されたというのを、患者さんからお聞きしました。
「ほう。そんな事を言う先生もいるんだなぁ」と感心した記憶があります。
しかし、ある時患者さんから「整体の施術が痛いんだよね」という話がありました。
ナンダッテーーーーー!!!!!
てっきり整体院からの説明にあったように、少なくとも痛い事はされてないんだろうとばかり思ってました。
実際には、1か月に1回の頻度で通っていて、施術を受けると2週間痛くて、残りの2週間でようやく落ち着てくるというサイクルを繰り返していたそうなんです。
マジか・・・・・・・
これを聞いたら僕のスイッチはONですよ!
「○○さんの身体にはその施術は合ってません。 できるならもう止めた方がいいですよ。」というお話はしました。
決めるのは患者さん自身ですが、僕の所にも通うのであれば、こちらの意見も伝えないといけません。
基本的にヒトは自分の身体を守るための防御反応として、外からの物理的な刺激に対して抵抗します。
その時に、関節が不用意な動きをしないようにロックしたり、筋肉を固くして守ろうとします。
これらの情報を感覚受容器(センサー)がキャッチして反応が起こります。
なので、頻繁に強い刺激を受けているとセンサー機能が興奮して、僅かな刺激に対しても反応するようになってしまうんです。
すると、今回のように脳疲労が溢れそうな状況の時には、些細な事でもケガをしやすくなってしまうという状態に陥ってしまいます。
結果的には整体の予約をキャンセルし、「もう行かない」とおっしゃっていました。
膝に限らず、外傷に対する固定はただ固めりゃいいって事ではなく、脳の機能を考慮した『ニューロフィクス』が広まる事を強く望みます。
結果的に、早期改善される患者さんが増えるので、いい事だらけじゃないですか!
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