肉離れというとふくらはぎ・太もも・脇腹あたりに起こりやすいでしょう。
正式には《筋挫傷》といいます。
原因としては走っている時、ジャンプした時・着地した時、急激に捻ったときなどに起こりやすいです。
ただ、今挙げた原因はあくまでもケガをした瞬間のことを指しています。
その奥には隠れた真の原因があり、それこそが『起こるべくして起きた』と言っていいでしょう。
肉離れが起きる原因で、筋肉疲労・筋肉の緊張が強い・固いなどわかりやすいものは想像できるとは思います。
では、なぜそういった状況になってしまうのでしょうか?
その答えは脳にあります。
筋肉の緊張の度合いを調整している1番の親分は脳にあります。
その脳に疲労やストレスなどの感情の問題が絡んでくると、無意識に緊張が強くなったり瞬間的な緊張のバランスが崩れたりしやすくなります。
その結果の《肉離れ》なのです。
例えば、陸上の短距離走で走っている最中に肉離れを起こす、テニスの試合中にふくらはぎやわき腹に肉離れを起こす、こんなシーンを観た事がある方もいると思います。
世界で活躍するような選手で筋肉が足りないなんて事はありえません。
その大会に向けてコンディションを整えているでしょうから、直前までオーバーワークという事も少ないでしょう。
身体の柔軟性があるから大丈夫というわけでもありません。(かたいよりは柔らかい方がいいですが)
では、なぜ肉離れを起こしてしまうのでしょうか?
それは、大会やその練習に対しての想いの強さや不安、緊張などが作用し通常よりも筋肉の緊張が強くなってしまう事に起因します。
最近では、それがわかっているからだとは思いますが、選手たちからは「平常心で臨む」 「練習通りやれば大丈夫」などの言葉が聞けるんだと感じます。
僕の柔道時代を思い返しても、そういったメンタルの重要性は強く感じています。
肉離れは本当に再発しやすいのか?
スポーツ選手のニュースなどでも肉離れが再発したという話が出ます。
一度肉離れを経験してしまうともう二度と元の状態には戻らないんでしょうか?
そんなことはありません!
やはり、そこにも脳の機能が関係しており一番のネックは恐怖心です。
「また傷めたらどうしよう」 「もうケガをする前の状態にはならないかも」などの負の感情が出てしまうと意識はケガをした場所に集中してしまうので、必然的に患部の緊張は強くなってしまいます。
それを克服するのは簡単なことではない事は理解しています。
だからこそ、脳と痛みの関係を知らずに克服するのは非常に困難でしょう。
まだスポーツの現場では「ここの筋力が弱い」と筋肉のみで考えている傾向にあるので、よっぽど痛みの勉強をしている人でないと気づけないと思います。
筋肉論に固執しているトレーナーにより、選手が苦しんでいるのを見るのはツラいです。
ケガや痛みの問題は【身体だけの問題】ではないのです。
そこをどれだけ選手に自覚してもらうかがトレーナーなど選手に携わる者の役目じゃないかと思います。
症例1 テニスプレー中にふくらはぎに痛みが出た
71歳 男性
テニスの練習中、ボールを打ち返すのに足を踏ん張った時に受傷。
痛みが変わらなかった為、2日後に家族に紹介され来院しました。
症状
・歩く時の痛み(足を引きずる)
・患部を押した時の痛み
処置
痛みはふくらはぎにありますが、念のためアキレス腱の断裂はないか確認しました。
内出血が出るような筋線維の部分断裂はありませんが、歩く時の痛みで足を引きずっていたのでニューロフィクスによるプライトン固定をしました。
固定後は痛みが軽減し、「お~ 歩ける!」と。
この後、受付で『ある話』を聞き、より一層僕の熱量が上がったのです。
その話は後ほど。
受傷から4日後には普通に歩けるようになった
初診の翌日に来院した際には、足を庇うことなく歩いてました。
普段から腰痛もなく、いたって健康体のようですが、せっかくなのでBFIで施術をしてから固定をしました。
肉離れを起こすということは、本人の自覚がなくても相応の脳疲労はあるので、軽傷だからと甘く見ずに最善の方法を取りました。
僕の予想よりも早く改善したので、テニスもすぐに復帰できそうです。
痛みは時として人生が狂うだけじゃなく生死にも関わる
この患者さんが、初診で処置が終わり帰るときに、現在マナ接骨院の受付横に貼ってある10月21日の講演会の案内を読んで『ある出来事』を話してくれました。
「だいぶ前の事だけど、親戚の人が大きなケガをして、あまりにも痛みが強く全然良くならなくて・・・最後には〇○しちゃったんだよね。 当時こういう痛みの事知ってたら違ってたかもな。」
↑ ↑ ↑
BFI研究会のFBグループには詳しく書いたんですがこの患者さんの話を聞いて、
『痛みの改善というのは肉体イジリだけしてたんじゃ意味がない。 痛覚の中枢である脳との関係をもっと知ってもらわなければ!!』
と、心がザワつきました。
難しい症例に関心のない医療者には伝わらない話なんですが、今、この時も痛みで苦しんでいる方は想像以上にいます。
そんな方たちの一部にでも情報が届き、貢献できるのなら、こんなにうれしいことはありません。
痛みの改善にとって、方法は2の次であって、最も重要なのは原因を知る事なんです。
とは言っても、巷には色んな原因論が転がってるのでどれを信じたらいいのかも難しいとは思います。
これだけはハッキリ言い切りますが、構造的な欠陥を原因として説いているものは疑ってください。
・骨の変形
・神経の圧迫
・骨盤の歪み
とりあえず、これらは原因にはならないので覚えておいて下さいね。
症例2 走り出した瞬間にブチッ!
ミニバスで親子レクレーションの為にウォーミングアップで走り出した際受傷
・踵をついて歩くと痛い
・つま先を上に持ち上げると痛い
・患部を押すと痛い
*患部を触った感じで、筋繊維の断裂はないので痛みの症状が突出してる感じでした(脳疲労による症状の特徴)
ふくらはぎ全体を覆うようにプライトン固定しで処置し、患部の負担を減らす為に松葉杖使用。
症状の経過
4日後に2回目の来院。
歩行時、まだ痛みは残っているものの踵をついて歩けるようになっていました。
松葉杖も返却。
3回目の来院の時点で、痛みはありませんでした。
初めの状態からしたら驚異の回復だと思います。
その理由としては、患者さん自身が肉離れの本当の原因である『脳疲労』に気づけた事が大きいと感じています。
なぜ肉離れになってしまったのか?
1番わかりやすい原因としては、走る時に踏ん張ったからというのはあります。
じゃあ何でちょっと踏ん張ったくらいで肉離れになってしまったのでしょうか?
そこを掘り下げていくと、意外な事がわかってくるのです。
問診で詳しくお話を聞いていくと、先週はかなり忙しく、前日にやった仕事の内容を思い出せない程の疲労感を感じていたそうです。
この疲れはどこが感じているのでしょうか?
答えは脳です。
脳疲労が溜まっている時は、身体への指令が上手くできずに様々な不調を感じる事があります。
例えば
・ダルさ
・頭痛
・肩こり
などが多いです。
しかし、あまりの忙しさや疲れを感じている場合じゃない時などは疲労のマスキングといって疲れを感じることすらできなくなってしまうのです。
そうなると脳は危機を感じ、何かしらのサインを出します。
代表的なものが
・ぎっくり腰
・40肩、50肩
があります。
意外かもしれませんが、脳疲労からくる症状にはこういったものまで含まれるのです。
今回の患者さんは、走りだした際に通常では起こらないはずの肉離れになってしまいました。
この【脳疲労と怪我の関係】を理解しないままスポーツ選手に対応していると、特定の筋力が足りないと指摘するような初歩的なミスを犯すおそれがあるのです。
その結果、あらゆるバランスを崩し再発を繰り返した挙句に引退に追い込まれる選手が意外なほど多いのです。
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