僕の伝える能力が足りなかったせいで、症状を取りきれず温泉療養に希望を託した患者さんの症例です。
そこに至るまでの経過を書き綴っていきます。
目次
5年間整形外科で治療するも改善なく薬剤師の紹介で春日部市から来院
72歳 女性
来院までの流れ
約5年前から膝の痛みで整形外科受診。
定期的に膝に注射をし、水が溜まったら抜くというのを繰り返していたが一向に良くなる気配はなく、気づいたら5年経っていたと。
医師から歩くように言われてやるようにはしてるが痛くて少し歩くと止めてしまう。
もうほとんど諦めていた時に、普段行っている薬局の薬剤師の方に当院の事を聞き来院されました。
症状
両膝痛 左>右
当院来院の前日に整形外科で左膝の水を抜いている。
・歩くと痛い
・立ち上がる時痛い
・朝起きるとこわばっている
・腫れている
・長い時間立ってると痛い
説明
そもそも、膝の変形や軟骨のすり減りと痛みは無関係だとお伝えしました。
膝の痛みで最終手段は手術だと思っている方は想像以上に多いですが、偽の手術でも痛みが改善する事もあるので《変形=痛み》に否定的な研究結果も出てきています。
アメリカの論文を基に書かれた記事でも紹介されています。⇒日経メディカル 変形性膝関節症の関節鏡下手術、症状の改善は「プラセボ効果」
初検時には変形が原因ではない事を説明し、2回目には脳と痛みの関係についてお話ししました。
約5年もの間、変形が原因だと信じ込まされてきたわけですから、いきなり僕の話を全て理解していただけるとは思ってませんが、ここをクリアしないとなかなか難しい感じはしていました。
歩くのも痛いのにイヤイヤやるくらいなら中止してもいいと説明し、良くなったら旅行や買い物など好きなだけあるけばいいとお話ししました。
膝の水が溜まらなくなり歩き方にも変化が出てきた
以前は膝に水が溜まると抜いていました。
そこまでいかなくても、ずっと膝が腫れていて曲げるのも大変だったようです。
初検から3週間後には腫れが引き、その後も水が溜まる事は1度もありませんでした。
歩き方は初めの頃は膝を曲げずにほぼ伸ばした状態で歩いていました。
見るからに痛そうな感じです。
ご本人は気づいていませんでしたが、歩き方は2ヵ月位してから膝を曲げて歩くことができるようになりました。
こういった変化が出てはいましたが、肝心の痛みは少し改善してはまたもどるといった状況を繰り返していました。
O脚が治らないと痛みはなくならないと思っている
先ほども述べたように、膝の変形と痛みは直接関係ありません。
この患者さんは変形が進んでいたので、いわゆるO脚になっています。
整形外科では『変形が痛みの原因』と言われてしまっているので、このO脚が治らないと痛みは変わらないと刷り込まれてしまっていたのです。
この思い込みを打ち消すのは並大抵のことではありません。
僕のこれまでの症例や資料で説明し、その時は納得したようでも無意識にまで刷り込まれたものはそう簡単には消えません。
だからこそ、医師をはじめとした医療者には患者さんに余計な呪いをかけないでほしいと強く強く望みます。
「温泉療養の為お休みします」と言われ悔しいが力不足を痛感
いくら腫れが引き、歩き方が良くなっても痛みが変わらなければ実感はないでしょう。
4か月が経ったころ、テレビで観た《杖忘れの温泉》に希望を託し1泊旅行に行きました。
結果は「変わらない」という事です。
温泉で痛みが軽減するメカニズムについても説明し、今回がダメでも結果的に脳が変われば痛みは変わると希望をなくさないようにしました。
この時点では、都内に出かけたり旅行に行ったりできるようにはなりましたが、やはり痛みの大きな改善にはいたりませんでした。
この3週間後、「しばらく温泉療養してみます」という事で来院は途絶えました。
正直「やっぱりダメだったか」と悔しい気持ちにはなりましたが、もっと上手に的確な情報提供ができれば結果は変わったのかもしれません。
完全に僕の力不足です。
どうせやるならポジティブな気持ちで行ってもらいたいので、プラシーボ込みでお話して快く送り出しました。
まとめ
テレビなどでサプリメントを売るために、さかんに膝の関節痛の原因は軟骨のすり減りだとやってますね。
整形外科でも同様の説明をしている所は多いですが、医師からの言葉が及ぼす影響をもっと自覚しなければいけません。
一度悪いイメージがついてしまったものを打ち消すのは想像以上に大変です。
どうせなら世界的な研究により出されている【変形や軟骨のすり減りは痛みの原因ではない】というのを信じてみませんか?
普通に考えて、そっちの方がいいはずなんですけどね。
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